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漢文として楽しむ論語 里仁第四 2/2トップページ 論語序説(朱子による孔子の略歴) 學而第一 爲政第二 八佾第三 里仁第四 公冶長第五 雍也第六 述而第七 泰伯第八 子罕第九 郷黨第十 先進第十一 顔淵第十二 子路第十三 憲問第十四 衞靈公第十五 季氏第十六 陽貨第十七 微子第十八 子張第十九 堯曰第二十 里仁第四 1/2 2/2 11(77) 子曰君子懷コ…
○ 【書き下し】子の曰く、君子は徳を懐う、小人は土を懐う、君子は刑を懐う、小人は恵を懐う、 【訳】君子は自分の徳性を失わないことを忘れない、小人は自分の居場所を変えたくないことを忘れない、君子は法に従うことを忘れない、小人は利益のことばかり考えて忘れない。 【解説】ここでは君子小人の趣向、公私が同じではないことを論じる。懐うとは思念して忘れないことを云う。土は居場所のこと。刑は法のこと。恵は利益のこと。 12(78) 子曰放於利而行…
○ 【書き下し】子の曰く、利に放って行うときは、怨み多し、 【訳】は、自分の利益のために得な方につきやすい。しかし、そうすると怨まれることも多い。 【解説】人およそ義によって行うのは公であり、利によって行うのは私である。君子と小人の別れるところは、義か利か、公か私か、の間にある。 13(79) 子曰能以於禮讓爲國乎…
○ 【書き下し】子の曰く、能く礼譲を以って国を為めれば、何か有らん、礼譲を以って国を為めること能わざれば、礼を如何、 【訳】先生が仰った。上が礼の中でも譲ることに重点を置けば、下もまたこれにならって譲る気風が育まれ、争奪の風は遠ざかるので、其の国を治めるのは難しいことはない。逆に、上が礼を行っても譲ることに重点を置かないのであれば、民も譲るより獲ることを優先し、やがて下に争奪がおこり、国は乱れる。これでは礼は何のためにあるのかわからない。 【解説】譲は、恭敬辞遜の義、礼の実である。何有は、難しいことはない、という意。およそ上が行い、下がならうことは、譲ると争うとの二つがある。 14(80) 子曰不患無位…
○ 【書き下し】子の曰く、位無きことを患えず、以って立つ所を患えよ、己を知ること莫きことを患えず、求めて知らる可きえを為せよ、 【訳】先生が仰った。今、位がないことは、患うべきことではない。いつか、位を得たときに、その位に立つ才徳が足りなければ、甚だ恥ずべきことだから、これを患えて、常に自ら修めないといけない。また、今は名を知られていなくても、患うべきことではない。いつか、誉を得た時に、才徳がその名に敵わず甚だ恥ずべきことになるから、これを患え、その知られるべき実を修めて、これを得ないといけない。 【解説】これは世の人の禄を求め、名を求めることの非を正している。そもそも君子はその己にある者を求めるのみである。そもそも君子の学は己がためにのみするものであって、名利を求めるものではない。しかし学成りて己に得る所があれば、求めなくても、禄も名声もその中にある。学而第一16と内容的に似ている。 15(81) 子曰參乎…
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【書き下し】子の曰く、参、吾が道は一を以って之を貫けり、曽子の曰く、唯、子出、 【訳】先生が仰った。参よ、吾が道はただひとつの理によって貫かれている。曽子が答えた。はい。先生は告げ終わると出て行かれた。 【解説】参は曽子の名。孔子が曽子に告げることがあって、まずその名を呼んだ。唯は応えの速やかにして疑いないこと。 【書き下し】門人問いて曰く、何と謂うことぞ、曽子の曰く、夫子の道は、忠恕ならくのみ、 【訳】他の門人たちは一貫の道理を聞き取らなかったので、これを曽子に質問した。曽子は、先生の道は突き詰めれば真心と思いやりのみです、と答えた。 【解説】忠とは己の心を尽くして残す所がないこと則ち真心。恕とは己が心を以って人の心をはかり、己を推して人に及ぼすこと則ち思いやり。 16(82) 子曰君子喩於義…
○ 【書き下し】子の曰く、君子は義を喩る、小人は利を喩る、 【訳】先生が仰った。君子は道義的に正しいかどうかを深く考え、小人は自分の利益になるかどうかを深く考える。 【解説】義は正しい道、天の理のよろしきところ、道義。利は人情の欲し願うところ、利益。喩るとは深く知ること。 17(83) 子曰見賢思齊焉…
○ 【書き下し】子の曰く、賢を見るときは斉しからんことを思い、不賢を見るときは内に自ら省みるなり、 【訳】先生が仰った。賢い人と出会うと、自分もそうありたいと思い、賢くない人と出会うと、自分はどうだろうかと反省する。 【解説】賢とは善のこと。不賢とは不善のこと。賢ければ善不善の判断がつくから不善は行わないが、賢くなければ善不善の判断がつかないから不善でも行ってしまう。 18(84) 子曰事父母幾諫…
○ 【書き下し】子の曰く、父母に事えるには幾に諌む、志の従わ不きを見るときは、また敬して違わず、労しても怨みず、 【訳】先生が仰った。父母の過ちに気づいたときは、やさしく静かに諌める。その諌めを聞き入れないときは、腹立たしくなるものだが、堪えて敬意を尽くし、しばらくは逆らわないようにし、折をみて再度諌め、それでも聞かなければまたしばくしてから諌め……と繰り返す。あるいは怒りから暴力を振るわれたりして疲れ苦しむこともあるかもしれないが、それでも決して怨むことなく、敬意をもって諌め続けるのみである。 【解説】ここでは父母の過ちを諌めるときのことを述べる。幾諌とは、ひそひそと静かに諌めて、露に強く諌めないこと。労は疲れ苦しむという意。 19(85) 子曰父母在…
○ 【書き下し】子の曰く、父母在すときは遠く遊ばず、遊ぶときは必ず方有り、 【訳】先生が仰った。父母が存命ならば、なるべく遠方へは行かないことだ。どうしても行くときは必ず居場所を知らせておくべきだ。 【解説】親と遠く離れると、何かあったときに駆けつけることができない。常に親と顔を合わせられるところに居るのが孝である。現代とは交通や通信の事情が大きく異なるので何とも言えないが、かつての遠方への旅立ちは、もう会えないかもしれないという覚悟が必要だったらしい。 20(86) 子曰三年無改於父之道…
○ 【書き下し】子の曰く、三年父の道を改むること無きを孝と謂いつ可し、 【訳】父が没して後に子が行う事は、父の意志を受け継ぐところに改めるべきところがあっても、三年の間はこれを改めることがないことを以って、孝だと言える。例えその改めることがよいことだとしても、改めたら孝だとは言えない。 【解説】これは学而第一11の後半と同じ。 21(87) 子曰父母之年…
○ 【書き下し】子の曰く、父母の年は知らざるベからず、一には則ち以って喜び、一には則ち以って懼る、 【訳】先生が仰った。父母の年齢は知っておかなければいけない。理由は、ひとつにはその命の長さを喜ぶこと、もうひとつには、その衰えゆくことを謹んで受け止めることである。 【解説】知とは覚えて常に忘れないこと。父母が年を取れば自分もまた年を取るのであって、父母も自分も永遠ではないことを改めて自覚することにもなる。 22(88) 子曰古者言之不出…
○ 【書き下し】子の曰く、古言を出ださざるは、躬の逮ばざらんことを恥じてなり、 【訳】先生が仰った。昔の人は軽々しく発言しなかった。自分の行動が伴わないことを恥じたからだ。 【解説】世間の人が軽く容易く発言するので、古人の風を述べたもの。昔の人は言うだけ言って何もしないのを、恥じとしたのだ。 23(89) 子曰以約失之者鮮矣
○ 【書き下し】子の曰く、約を以って之を失する者は鮮し、 【訳】先生が仰った。何事も慎ましくしていて失敗する人は少ないものだ。 【解説】約とは、慎ましくして、度を過ごさないようにすること。いわゆる倹約簡約ということだけではなく、何事も欲しいままにしないことである。 24(90) 子曰君子欲訥於言敏於行
○ 【書き下し】子の曰く、君子は言に訥くして、行に敏からまく欲す、 【訳】先生が仰った。君子であるのなら、何か言うときはゆっくり話し、行動は敏速にしたいものだ。 【解説】訥とは、鈍い、遅いといった意。敏とは、速やかという意。言葉は過ぎやすく流されやすいので、ひとつひとつ慎重に選んでゆっくり発言したほうが間違いがない。行動するのは面倒な部分もあり、つい腰が重くなりがちだが、だからこそ敏速に行動するよう心掛けることが大事だ。 25(91) 子曰コ不孤…
○ 【書き下し】子の曰く、徳孤ならず、必ず隣有り、 【訳】先生が仰った。人の徳は孤立するものではない。必ず、これに親しく従う者がいる。 【解説】隣とは、親しみという義。人の徳には、必ずその類を以って、これに従う者がある。いつまでも孤立しているものではない。 26(92) 子游曰事君數…
○ 【書き下し】子游の曰く、君に事えて數するときは、斯に辱められる、朋友に數するときは、斯に疏んじられる。 【訳】子游が言った。臣たる者、君を諌めて聞き入れられない時は、その諌めるべきことを止めて、去るのがよい。しばしば諌め続ければ、罪を得て、自ら辱めを受けることにもなる。朋友をしばしば諌めるときは、聞かされる者としては嫌になり、やがては疎んじられるものだ。 【解説】數とは、しばしば諌めるを云う。辱められ、疎んじられるとしても、君臣朋友はみな義を以って合う者だから、その道は同じである。 |
最終更新日:令和02年10月21日
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