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漢文として楽しむ論語 陽貨第十七 1/5トップページ 論語序説(朱子による孔子の略歴) 學而第一 爲政第二 八佾第三 里仁第四 公冶長第五 雍也第六 述而第七 泰伯第八 子罕第九 郷黨第十 先進第十一 顔淵第十二 子路第十三 憲問第十四 衞靈公第十五 季氏第十六 陽貨第十七 微子第十八 子張第十九 堯曰第二十 1(435) 陽貨欲見孔子…
○ 【書き下し】陽貨、孔子に見わまく欲す、孔子見わず、孔子に豚を帰れり、孔子、その亡きを時として、往きて之を拝す、 【訳】陽貨が孔子に会いたいと思い、呼び出した。孔子は会わなかった。陽貨は孔子に豚を贈った。豚が届いたとき、孔子は家に居なかったので、礼に従って陽貨の家に往き、感謝の拝をした。 【解説】陽貨は魯の季氏の家臣、名は虎。季氏の勢いがやや衰え、やがて陽貨が季氏を操り、政事を好き勝手に行うようになっていた。この時、孔子は仕えずにいたので、陽貨は自分の下で仕えさせようと考えた。礼により、大夫から士に物を贈るとき、もしその士が外出中で自ら受け取らなかったら、明くる日に大夫の元へ往き拝謝するのが作法とされている。よって陽貨は孔子が家に居ない時を伺って、豚を贈り、その拝謝のために来たときに会おうと謀ったのだ。 【書き下し】諸れ塗に遇えり、孔子に謂って曰く、来たれ、予れ爾と言わん、曰く、其の宝を懐いて其の邦を迷わす、仁と謂いつ可けんや、曰く、不可なり、 【訳】その帰りに陽貨と道でばったり会った。陽貨は孔子に、話があるからと、こっちに来るように言った。仁者は常に民のことを考え、世を救うことを心とするものだが、その道をいだき修めても仕えず、其の国が迷い乱れるままにしている。それで仁者と云えるのでしょうか。孔子が仰った。そうではないな。 【解説】宝とは孔子の道を指す。 【書き下し】事に従うことを好んで亟時を失う、知と謂いつ可けんや、曰く、不可なり、日月逝んぬ、歳、我と與にせず、孔子の曰く、諾、吾れ将に仕えんとす、 【訳】では、仕える機会を求めてあちらこちらへ行っても、しばしば時を失って用いられないのは知者と云えるでしょうか。孔子が仰った。そうではないな。日月は速やかに過ぎ去って逝き、私と同じように歳を重ねているが、そろそろどこかに仕えてもよい頃ではないでしょうか。孔子が仰った。確かにそれはそうだな。私もどこかよいところがあれば、仕えたいものだ。 【解説】好従事は孔子が諸国を巡って仕えるべき君を求めたことを指す。結局孔子は、一般論として聞いて答えるだけだったので、陽貨はこれ以上の勧誘はしなかった。 2(436) 子曰性相近也
○ 【書き下し】子の曰く、性、相近し、習って相遠し、 【訳】先生が仰った。人は生まれたときの性質はだいたい近寄っているものだが、育ち方、教育、環境によって差がでてきて、賢くもなるし愚かにもなり、粗暴にもなるし温厚にもなり、それぞれの性質が遠くなるものだ。 【解説】性とは人の天に受け生まれて心の本質となるもの、言うなれば性質といったところ。 3(437) 子曰唯上知與下愚不移
○ 【書き下し】子の曰く、唯、上知と下愚とは、移らず、 【訳】先生が仰った。人の性質の中でも、上品さと下品さは、生涯変化しない。 【解説】上知は上品、下愚は下品なこと。おおよそ人は上品な者、下品な者がいるが、最多はその中間の人だ。その中間の人は環境や教育によって、上品な方にも下品な方にも移る。しかし最上最下の者だけは、移らないのだ。 4(438) 子之武城…
○ 【書き下し】子、武城に之きて、弦歌の声を聞く、夫子、莞爾として笑って曰く、雞を割くに焉んぞ牛刀を用いん、 【訳】先生が魯の小さな邑の武城に往こと、琴の弾き語りの声が聞こえた。孔子はニコニコ笑って仰った。しかしどうして鶏を割くのに大きな牛刀を用いる必要があるのだ。 【解説】武城は魯の邑の地名。これは子游が武城の宰のとき、孔子が門人を連れて武城に往き、子游が出迎えたときのこと。弦歌とは琴を弾いて詩を歌うこと、礼楽の教えが行き届いている様子。子游は孔子の弟子、性は言、名は偃、子游は字。雞は小さな邑を譬え、牛刀は礼楽の教えが大いなることの譬え、こんな小さな邑を治めるのに、どうしてこんな立派な礼楽の教えが必要なのか、と、咎める風に言ったのだ。しかし実は喜び褒めているのだった。 【書き下し】子游、対えて曰く、昔、偃、諸を夫子に聞けり、曰く、君子、道を学ぶときは則ち人を愛す、小人道を学ぶときは則ち使い易しと、 【訳】子游が答えて言った。昔、私偃は、先生から伺いました。為政者が道を学ぶと人を愛するようになり、民衆が道を学ぶと使い易くなると。 【解説】ここでは君子は為政者、小人は民衆のこと。 【書き下し】子の曰く、二三子、偃が言、是なり、前言は之を戯れらく耳、 【訳】先生が仰った。門人たちよ、偃=子游の言うことは正しい。さっき私が言ったのは冗談だよ。 【解説】前言は、割雞云々と、咎める風に言ったこと。 5(439) 公山弗擾以費畔…
○ 【書き下し】公山弗擾、費を以いて畔く、召ぶ、子、往かまく欲す、子路、説びず、曰く、之くこと未らまく已、何ぞ必ずしも公山氏に之かん、 【訳】公山弗擾が費邑を拠点に、季氏に叛いた。公山氏は孔子を呼んだ。孔子はその要請を受けて往こうと思った。その様子が子路は不満で言った。往くべきではないでしょう。なんで公山氏のところへ往く必要があるのですか。 【解説】公山は姓、弗擾は名、季氏の費邑の宰。自らその邑を本拠に季氏に叛いた。 【書き下し】子の曰く、夫れ、我を召ぶ者にして、徒ごとならんや、もし 我を用うる者有らば、吾れ其れ東周を為せんか、 【訳】先生が仰った。この私を呼ぶのだから、無駄なことではないはずだ。もし私を用いる者が有れば、私はかつての周の道をこの周の東方に当たる魯に興すつもりだ。 【解説】これは子路がなんとか孔子を思いとどまらせようとするのに答えてのことであって、公山氏に往く意がこのようだと云うわけではない。なお、結局孔子は公山氏には往かなかった。 |
最終更新日:令和02年10月21日
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