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漢文として楽しむ論語 子張第十九 1/3トップページ 論語序説(朱子による孔子の略歴) 學而第一 爲政第二 八佾第三 里仁第四 公冶長第五 雍也第六 述而第七 泰伯第八 子罕第九 郷黨第十 先進第十一 顔淵第十二 子路第十三 憲問第十四 衞靈公第十五 季氏第十六 陽貨第十七 微子第十八 子張第十九 堯曰第二十 1(472) 子張曰士見危致命…○ 【書き下し】子張の曰く、士、危うきを見て命を致して、得るを見て義を思い、祭りに敬を思い、喪に哀を思うは、其れ可ならく已、 【訳】子張が言った。士というものは、仕える君の危難を見たら自らの命を惜しまず救う。何かを貰うときは、義に適うか不義かを詳らかにして、卑しく悖るようなことはしない。祭りには心からの敬意を込める。喪には心からの哀しみを込める。このようであってこそ、士と称することができるのだ。 【解説】子張は孔子の弟子、姓は顓孫、名は師、字は子張。ここに挙げたことのひとつでも欠けるようならば士と称するには足りない。 2(473) 子張曰執コ不弘…○ 【書き下し】子張の曰く、徳を執ること弘からず、道を信ずること篤からざれば、焉んぞ能く有ることを為し、焉んぞ能く亡きことを為せん、 【訳】子張が言った。自分が修めた範囲内の徳に固執して守り、学んでいる道を正しいと信じる志が篤くない人は、いてもいなくてもどうでもよい。 【解説】このような人は、要するに凡人であって、何をやっても大成しないということ。 3(474) 子夏之門人問2交於子張…○ 【書き下し】子夏の門人、交わりを子張に問う、子張の曰く、子夏何とか云える、対えて曰く、子夏の曰く、可なる者には之に与し、其の不可なる者をば之を拒ぐ、 【訳】子夏の弟子が、子張に人との交わりについて質問した。子張が言った。子夏は何と云ったのか。答えて言った。子夏は次のように言った。交わるべき者は歓迎し、交わるべきでない者とは交わらないようにする。 【解説】可者=交わるべき人、不可者=交わるべきでない人と訳したが、可不可の具体的な判別は記されていないのでそうした。 【書き下し】子張の曰く、吾が聞ける所に異なり、君子は賢を尊んで衆を容れ、善を嘉みんじて不能を矜れむ、 【訳】子張が言った。私が聞いたこととは異なる。君子は賢者を尊びつつ、普通の民衆も受け容れるし、善人を喜んで称えつつ、何もできない人を哀れむ心も持っている、と。 【解説】子張が孔子から聞いたのとは異なっていたので、こう云った。 【書き下し】我が大賢ならば、人に於いて何の容れざる所あらん、我が不賢ならば、人将に我を拒がんとす、如之、何ぞ其れ人を拒がん、 【訳】仮に私がとても賢いとしたら、誰とでも交わることになる。仮に私が不賢で愚かならば、人から自分が拒まれることになる。そうであるのなら、どうして人を拒もうか。 【解説】子張が聞いたところによる思いを述べて、子夏の云うことは自分本位で料簡が狭いと、謗ったのだ。 4(475) 子夏曰雖小道…○ 【書き下し】子夏の曰く、小道と雖も必ず観つ可き者有り、遠きに致さば恐らくは泥まん、是を以って君子は為ざるなり、 【訳】子夏が言った。日用に使ういろいろな技術も、元々は聖人が製作したものだから、観れば必ず参考になるものである。とは言っても日用の小事についてのことだから、小道だけで遠大な事業を行い致すには不十分であり、頓挫するだろう。したがって君子は、大雑把に理解する程度で止めておき、深入りはしない。 【解説】子夏は孔子の弟子、姓は卜、名は商、字は子夏。小道とは、農業、医療、占術などのこと。これらはもとみな聖人が、天地自然の理法によって日用に使うために製作したものだ、とされている。泥むとは、頓挫する、障害になる、邪魔になる、といった意。 5(476) 子夏曰日知其所亡…○ 【書き下し】子夏の曰く、日びに其の亡き所を知り、月づきに其の能くする所を忘るること亡きを、学を好むと謂いつ可からく已、 【訳】子夏が言った。毎日新しい知識を増やし、月ごとに蓄えた知識を忘れないようによく復習していてこそ、学を好むと云えるのだ。 【解説】亡き所は、まだ知らないこと、といった意。 6(477) 子夏曰博學而篤志…○ 【書き下し】子夏の曰く、博く学んで志篤く、切かに問いて近く思う、仁、其の中に在り、 【訳】子夏が言った。多くのことを学んで、道に対する志を深く強く持ち、わからないことは質問し、その質問の答えを得られたならば、それを目で見て手で触れた身近なもののように心に焼き付けるようであれば、仁はその中から見つけられる。 【解説】博学篤志切門近思の四つは知識を得るためのことであって、未だ勤め行って仁をするには及ばない。しかし常々これを心がけていれば、やがて心と道がひとつになり、仁にたどり着くのだ。 7(478) 子夏曰百工居肆以成其事…○ 【書き下し】子夏の曰く、百工、肆に居て以って其の事を成す、君子は学んで以って其の道を致む、 【訳】子夏が言った。職人は仕事場に居て、一心不乱にその仕事をする。君子もそんな職人のように一心不乱に学んで怠らないようにすれば、その道を極め致すことができるのだ。 【解説】百工は工匠、職人。肆はその仕事をする場所。職人は自らの技量を極めようと一心不乱に仕事をする。 8(479) 子夏曰小人之過也必文○ 【書き下し】子夏の曰く、小人の過ちは必ず文る、 【訳】子夏が言った。小人は過ちを改めることを憚り、必ず取り繕って誤魔化す。 【解説】小人は自らを欺くことを憚らないので、過ちがあっても必ず覆い隠し、その過ちを重ね、ついに流れて悪となる。君子は過ちがあれば速やかに改めるので、取り繕って誤魔化すこともない。 9(480) 子夏曰君子有三變…○ 【書き下し】子夏の曰く、君子に三変有り、之を望むときに儼然たり、之に即くときに温かなり、其の言を聴くときに獅オ、 【訳】子夏が言った。君子は人と会うときに、三つの変化がある。はじめて遠く望み見るときは、正しく厳かな顔つきで礼を恭しくし、近寄るときはその顔色温和で親しみがこもっていて、その言葉を聴くと激しく厳しい。 【解説】言葉が激しく厳しいとは、義に詳しく理が定かで曲げられるところがない、一分の隙も無い、といったところ。 10(481) 子夏曰君子信而後勞其民…○ 【書き下し】子夏の曰く、君子は信ぜられて後に其の民を労す、未だ信ぜられざるときは則ち以って己を獅オむと為す、信ぜられて後に諌む、未だ信ぜられざるときは則ち以って己を謗ると為す、 【訳】子夏が言った。君子は予め信用信頼されて後に民を使う。未だ信じられないうちに使えば、民は自分たちが理不尽に苦しめられていると思うものだ。君主に仕えるときも自分が信じられるようになった後にこそ、諌めることもできるのだ。未だ信じられないうちに諌めれば、謗られたと思われるものだ。 【解説】ここで云う君子は位に居て、民を使う立場、君主に仕える立場の者を指す。 |
最終更新日:令和05年01月28日
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